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@県花はチューリップ 2014.5.8
県花はチューリップ

チューリップの栽培地

 品質の良さと全国一の輸出量を誇った富山チューリップは、平成7年の栽培農家数324戸、栽培面積226ヘクタールで、5,233万球が生産されている。様々な品種が栽培され、その数は320種を超えるが、その多くはオランダから輸入された種球を育成したものである。

 富山県の球根栽培は、近年までアメリカ向けの輸出を中心に展開されてきたが、円高によってオランダと競争できず、輸出は減少の一途をたどり、現在は国内向けの生産に力が注がれている。
 栽培地は県内に広く分布している。戦前は東砺波郡庄下村(現砺波市)を中心とする庄川扇状地の村々に限られていたが、入善町、黒部市、朝日町などの黒部川扇状地でも栽培が盛んである。

 チューリップの栽培が県下に広がったころ、昭和29年には富山県の花に44年には砺波市の花に選ばれている。

盛んな新品種の開発

 チューリップ栽培の歴史は古く、世界でこれまで作り出された新種は8,000種とも1万種ともいわれる。歴史の浅い日本で栽培される品種の多くはオランダからの輸入であるが、独創的で優れた品種を作り出さなければいつまでたってもオランダに遅れをとることになる。

 日本でも大正末から富山県を中心に品種改良への取り組みが見られた。大正末期から水野豊造が交配育成した多数の実生の中で特に優れていたものを「天女の舞」「王冠」「黄の司」「黄金閣」などと命名して昭和27年に発表した。その後も吉川小左衛門が「紫宸殿」、石田甚三が「レインボー」、水野豊孝が「ザ・グレゴール・ミズノ」などと命名した新品種を発表している。これら球根生産農家が育成した新品種は30余種に及ぶ。また、富山県農業技術センター野菜花き試験場が育成した優秀な品種は60余種に及び、「サクラ」「黄小町」「白雪姫」「紅輝」「雪壷」など20品種が登録品種となっている。

富山の風土に適したチューリップ

 チューリップの球根は秋に植え込む。春までの発根伸長期は低い温度を好み、乾燥を嫌い、土の水分や温度の変化の幅がなるべく小さい状態であることを好む。

 富山平野は砂質壌土扇状地水田が主で、植え付け後の10月から12月は適度の雨に恵まれ、冬は雪に覆われて一定の地温と水分が保たれ、球根は地中できわめて良い条件で育つ。

 チューリップの茎葉の発育が盛んになる4月上旬から、球根肥大が進む6月上旬にかけては多くの水分を要求し、その後6月中旬から下旬にかけての球根の充実、茎葉の枯死、球根の色付き掘り取りへと、これらの期間は團場の水はけがよくて乾き気味に経過することが良質な球根生産のポイントといえる。

 チューリップ畑でのこのような水分管理は、全県的に発達した用水路を流れる法具な水量を利用しての畦間灌漑と、水分の浸透性良好な砂壌土の團場、および完備した排水路によって対応することができる。

 なお、富山県ではいわゆる表日本の諸県に比べて春の訪れが遅く、そのために、チューリップの主要病害であるウィルス病を媒介伝染するアブラ虫の発生と活動が遅れることも有利な条件の一つとしてあげることができる。

 また、チューリップの栽培は水田裏作として始まり、現在も稲作との輪作体系がとられている。
 県下には、このようなチューリップ栽培の適地は5,000ヘクタールも分布している。

【砺波郷土資料館・砺波市文化協会 『となみのチューリップを育てた人びと』1996年より抜粋】

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