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F−2これからの散村 2014.11.26
(4)産業構造の転換と中心市街地の機能強化

米価の下落に伴う農業情勢の厳しさは今後さらに強まると予想されます。散村景観の維持と地域の発展には、農業の振興はもちろんですが、より積極的な産業構造の転換が不可欠であるといえます。昭和40年代以降、砺波平野の散村地帯に立地した工場はすでに1000余を数えます。さらに散村地帯にふさわしい先端技術関連工場や情報産業関連の事業所などの立地を促し、安定した第二次・第三次産業への就労の場が確保されることが望まれます。その際、散村景観の維持を図るため、立地場所は市街地周辺や庄川右岸の一帯などが敵地と考えられます。

 散村地帯への工場立地に際し、工場の周辺に植樹した緑地帯を設けている例は、砺波市柳瀬地区の松下電子などの一部の企業に限られています。多くの工場では大きな建物がむきだしのままで、周辺の散村景観とは異質な様相を呈しています。新たに立地する工場に対して工場周辺の緑化を義務付けるなどの施策とともに、既存の工業団地や工場周辺の緑化も必要です。緑化の推進は工場自体にとっても緑の環境作りとして大切なことであるという認識を共有できるようにしていきたいものです。

(5)行政と市民が一体となった散村景観整備の推進

砺波平野の散村は、大正3年に京都大学の小川琢治教授が「越中西部の荘宅に就いて」と題する論文が発表されて以来、地理学・歴史学・社会学・民俗学・建築学などの諸分野で注目され、多くの研究が行われてきた全国でも稀な地域です。

 砺波市ではこれまでも散村景観を重要視し、多くの政策の中に位置づけられてきました。昭和58年に砺波散村地域研究所が設立されたのもその一つです。平成5年の「花と緑のまちづくり条例」をはじめとして、平成14年の「散居景観をいかした地域づくり協定」、平成18年の「砺波市農村環境計画」の策定などがあり、また、全国の散村を有する主要市町村に呼びかけて「散居村サミット」も開催されてきました。

 平成18年には、農水省の推進した田園空間博物館構想に基づき、砺波市・南砺市をエリアとした「となみ散居村ミュージアム」が開設されています。砺波市では「文化的景観」選定への取り組みも行われていますが、砺波平野の散村景観の保全には、南砺市・小矢部市・高岡市が連携を図り、散村を活かした地域づくりの推進が望まれます。


【砺波市立砺波散村地域研究所『砺波平野の散村「改訂版」』2001年より抜粋】

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