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3(2・3)砺波平野の様々な屋敷林 2014.10.10
(2)ー@中間型の屋敷林

長久宅の屋敷林

スギに囲まれた庭園のある屋敷林
長久 敏宅 砺波市東保

 長久宅は庄川の東、高速道路が新湊庄川線を横切るあたりに位置する。

 家屋は東面を向いた母屋を中心にして、北側に平屋の作業場と車庫・丸太小屋が2列で並び、後方の一角、北西の位置に蔵が配置されている。作業場が平屋建ちなのは籾を乾燥するために、面積が広く、戸の高さも通常のものよりも高くして風通しを図ったものである。屋敷林の相観はスギと庭木の2つの部分に分けられるのが特徴である。特に母屋の前全面がアカマツやクロマツなどの松類を中心にした庭である。築庭から約30年を経ており、灯籠や景石と樹木がなじんで落ちつきのある風情である。樹種にはアカマツやクロマツのほあにヒマラヤスギ、イトヒバ、コウヤマキ、ネウミサシ、チャボヒバ、キャラボクなどの針葉樹、タラヨウ、タイサンボク、モチノキ、ヒイラギ、ヒイラギモクセイ、ウバメガシなどの常緑樹、ヤマモミジ、トウカエデ、コブシなどの落葉樹がきれいに刈り込まれ、1階の軒先を超える程度に成長抑制がなされている。

 そのなかに70株あまりの刈り込みされたサツキ類が、全体を覆うように配植されている。低木や小低木類はそのほかに、イヌツゲ、アオキ、ヒサカキ、ナンテン、コマユミ。コクチナシ、ハマナス、ウメ、ゴヨウマツ、キンモクセイ、アセビ、コウメ、ツバキなどが合間をうめている。最近リキュウバイとコデマリの変種を京都から取り寄せたとのことであった。

 スギの木立は母屋の後ろにあたる西側に15本、南側に28本、直径30〜46センチのものが植えられ、小屋根を越す程度に枝おろしがなされ頑強な風格がある。また南面のスギは根元に枝を1メートル弱帯状に残し、さらにその下にアオキを配置して2つがさねの珍しい垣根になっている。また圃場整備後さらに新たにスギ垣を外側に設けて、その内側を園芸菜園としている。
 
前庭を除いた屋敷内は高木のみで、除草がゆきとどいて苔が美しい。庭園好みの屋敷林といえよう。

(3)−@庭園風の屋敷林「スギを残す工夫が見られる屋敷林」

スギを残す工夫が見られる屋敷林
宮崎 実宅 砺波市鹿島

 宮崎宅は砺波市五郎丸から福光方面へ向う南砺スーパー農道の鹿島交差点の南側にある。東と南面は石垣で、西と北面はカイズカイブキの生け垣で囲まれている。家は東向きで、道から玄関に向かうとその南側の蔵の前に家と小高いに、多くの石を入れた瀟洒(しょうしゃ)な庭園が造られている。宮崎家が現在のような庭園風な庭作りにしたのは、圃場整備時の昭和46年のことである。最もそれ以前から先代の当主が好きで、自分で池を掘ってツツジをはじめゴヨウマツやイチイ、モチなどの庭木を入れた庭園を作っていた。特に庭の中央にあるヤツフサゴヨウは、先代が井波の太子伝に出かけ、その帰りに買ってきた苗を植え、大事に育てていたものという。100年以上のものである。

 現在、庭園にはこのヤツフサゴヨウをはじめクロマツ、イヌツゲ、オウゴンヒバ、ヒイラギ、ニシキギ、キャラボクなどの多くの庭木が植えられている。そのあいだにツツジが丸くきれいに刈り込まれて30株以上配されている。この維持管理にはほとんど奥さんがあたっている。除草剤は一切使わないので草むしりが毎日の仕事である。冬の雪吊も今まではご夫婦で行っていた。

 このように庭園風であるのは前の東側だけで、南と西側にはスギが多く植えられていた。若いころははしごをさして木に登り、枝おろしもしていたという。ところが15年ほど前にはじめてコビキサを頼んだところ、ばっさりと枝を切られ、そのせいか、平成3年の台風でその内の8本が一度に倒れて、やむを得ず伐採した。現在スギは東と西側にあり、南側は穴の開いたようになっている。屋敷林があれば、家の痛みも少ないし、夏は涼しいので、是非またスギを植えたいと家中で話しているという。


【砺波散村地域研究所 『砺波平野の屋敷林』平成8年より抜粋】

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