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5(1〜3)屋敷林に来る鳥−散居は鳥たちにも多様な生活環境− 2014.10.10
(1)鳥たちの生活の場としての散居

厳冬のキジバト

 屋敷林を構成する樹種はスギ、ケヤキの高木から、低木のヒサカキなど、また常緑針葉樹・広葉樹、落葉樹と多様な樹はいろいろな虫を育て、大きな森、小さな森と野鳥たちには多様な環境を提供している。

 厳冬の積雪期には、南砺の山々で餌のとれなくなった漂鳥たちや、北の国からの冬鳥たちは散居の森で越冬する。虫の蛹や卵、樹間に潜む虫、あるいは樹の実や芽などはスズメやキジ、キジバトなどの冬季の餌となる。また風雪をしのぐ森でもある。

 春になれば、漂鳥や冬鳥たちは散居の森を去り、留鳥や夏鳥たちの営巣の場となる。森の周辺は小川が流れ、(今のU字溝やコンクリート川では昔のような多様な生態環境は望めないが)水田を主とした人々の生活の場は野鳥たちにとっても雛を育てる環境となる。特に落葉樹の若芽とともに昆虫が育ち、その変態は鳥の雛たちを育てる成長過程に適合した自然の恵みである。また散居の森は、繁殖期のテリトリーの森でもある。どの家の屋敷林もトビやカラスの営巣ができるわけでもない。鳥たちはいろいろな条件を満たす森を選択する。

 また散居の森は鳥たちが天敵から襲われたときの逃げ場としても重要な役割をもっている。

 夏から秋にかけて若鳥たちは集団を編成し、生きるための学習期にはいる。夜になれば定めた森に一斉に帰ってくる。それが塒(ねぐら)である。塒とするところは、はじめは小さな軍は小さな森を選ぶ。小さな軍が集まってしだいに大きな集団となり、塒も大きな森が選ばれる。春には塒は解かれ、繁殖期を迎える。

 散居は屋敷林だけが野鳥たちの生活の場ではない。キジ、カルガモ、ヒバリたちは水辺や草原が大切である。昔のように野犬や野猫に巣を襲われることは少なくないが、近年の草刈の徹底からカラスやトビの脅威にさらされることも多い。またカルガモなどは雛が川にはいると上がることができず流されて死亡する例は実に多い。

 このように散居の多様な森は周辺の環境とともに野鳥たちにとっても多様な生活環境なのである。次に散居の森やその周辺に来る鳥たちについて、四季の生活の例をいくつか述べてみる。

(2)漂鳥や冬鳥たちの宿

・南砺の山々から
今年は山に積雪が多かったせいか、久しぶりにウグイス、ミソサザイが訪れた。近所でも何年ぶりかで春にウグイスの声を聞いたという人もあった。

・北の国から
10月の声を聞くとイスカやシメが単独で訪れる。マヒワやアトリ、タゲリは群れをなして田圃に訪れる。

・散居に訪れる漂鳥や冬鳥たち
毎年ほぼ同じようだが、その年によって見かける種に多い少ないはある。年によっては全くみかけない種もある。また訪れる月日も多少異なる。

(3)春は巣作りと子育て

・樹林での営巣
春、他の鳥より一足早くモズがスギの生け垣等に巣を作り、知日とカラスは大きな森の高い木に営巣するため、トビとカラスが場所取り争いをするのをよくみかける。昔はフクロウとトビが神社の森で争って営巣したが、今はフクロウの生息をみない。近年カッコウが生息、托卵はオナガに例がある。

・また人家など、建物や石垣を利用する鳥もいる。夏に来るツバメ、ハクセキレイ、ムクドリなどに例をよく見る。近年神社や寺院の高い木にアオサギやコサギ等、サギ類のコロニーが多くなった。山手に近いところではカラ類の営巣もあったが、近年天敵や人為的環境の悪化によってか、営巣はない。


【砺波散村地域研究所 『砺波平野の屋敷林』平成8年より抜粋】

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