はじめに
2013.3.26
いつも心にお祭りを
神明社の秋季祭礼(鷹栖地区)
富山県民は「勤勉で忍耐強い」と評されます。それは真宗王国ともいわれる信仰的風土に根ざすものなのかも知れません。米作りが盛んな砺波は、その象徴的な地域といえるでしょう。ですが、そんな砺波の人たちの血を熱くたぎらせるのが「祭り」です。
外の人から見えにくいもののひとつに、人のライフサイクルがあります。しかし、砺波の人には祭りを軸とした1年の明確なサイクルがあります。砺波には子供歌舞伎曳山や獅子舞、夜高祭りのほか、盆踊りの「チョンガレ」や「えんじゃら」など多くの祭りが今も受け継がれています。
春。絢爛豪華な曳山の上で子供達のあどけなくも優美な歌舞伎が上演されます。全国6か所にしか残っていない出町子供歌舞伎曳山です。祭礼の半年前から子供たちは稽古に励み、大人たちは裏方として世話をします。
夏の一歩手前。夜空に煌めく大行燈を男達がぶつけ合います。毎夜、町内の男衆が集まって、たった2日間の夜高祭りのために数カ月の製作期間を費やします。そして、祭りが終わった直後から翌年の構想に取りかかります。
秋。集落に笛と太鼓の音色が響き渡ります。砺波には今も数多くの獅子舞があり、祭りの1ヶ月ほど前から宮や公民館で練習が行われ、本番を迎えます。
砺波では、子供から大人まで一年じゅう頭の片隅に祭りが居座っています。
また、祭りは多くの副産物をもたらします。祭りほど濃密にコミュニケーションを取れる場はないでしょう。泣いて、笑って、ときにはケンカをして。感情を表に出すからこそ、生まれる対話もあります。それが地域コミュニティの維持に大きく役立っているように思います。
そして、伝統を重んじること。複雑な曲目や行燈などの技巧を凝らした製作方法は「集団的知財」とも言うべきもの。この2点がじつは祭りの本質なのかも知れません。砺波に生まれたからには、祭りに参加できる権利があります。住んでいる人も同じです。熱くなれるもの、打ち込めるものが地域の活力につながるなんて、絶好のチャンスです。
さあ、まずは夜高のロウ引きからはじめてみませんか! ヨイヤサー!
(野原大輔:砺波市教育委員会 主任)
制作中の夜高行燈(中之島)
制作中の夜高行燈(中之島)
完成した夜高行燈(木舟町)
完成した夜高行燈(木舟町)