せんばごき、土臼(どろうす)、唐箕(とうみ)、千石とおしなどの便利道具が使われるようになったのは、江戸時代中期の元禄年間(1688〜1703)のころであった。このころになると、新田開発なども限界に達し、生産を高めるためには、決められた広さの耕地でできるだけ多くの米を収穫したり、効率よく農作業を進めたりすることが必要になってきた。また、日本各地で特産物が作られ、お金で取引されるようになると、農民もお金でものを買うようになった。さらに、町の発達によって農村人口が流出し、奉公人の数が足りなくなったからである。
ただ、これらの便利な農具が砺波地方に普及したのは、元禄年間より少し遅れるようである。1788年(天明8)砺波郡下川崎村(現小矢部市)の宮永正運(みやながせいうん)は『私家農業談(しかのうぎょうだん)』という書物を著わし、当時の砺波地方の農業の仕方をくわしく書いている。それによると、このころになって、せんばごき、土臼、唐箕、千石とおしなどの便利な農具が、新しく使われるようになったことがわかる。
せんばごきは、歯がたくさんあるので、千歯ごきと呼ばれたり、能率があがるので千把ごきと呼ばれたりした。稲用の鉄製せんばごきは、西日本の堺付近で始まったといわれている。それまでのこきばしやこきだけに比べて能率が数倍も上がったので、別名「後家だおし」と言われ、稲こきの時期に雇われていた後家たちの仕事を奪うほどであった。砺波郡内島村(高岡市)の五十嵐篤好(いがらしあつよし)の著わした『耕作仕様考(こうさくしようこう)』に引用されている1697年(元禄10)の文書には、すでに稲こきの名が書かれている。
土臼は、江戸時代の寛文年間(1661〜1672)に中国より伝来し、元禄のころにかけて徐々に今までの木臼に代って使われるようになった。中国より伝来当時の土臼は、利臼(ききうす)と呼ばれ、5人で動かす大型のものであったが、しだいに小型のものに改良されてきた。砺波地方では、宝永年間(1704〜1710)にはまだ木臼が使用されていたが、天明年間(1781〜1788)になると小型の土臼がだいたい一般的に使われるようになった。
選別用具については、唐箕や千石とおしが使われるようになって、作業が大変便利になった。前にあげた『私家農業談』によると昔は、「米とおし四つ、内壱つを荒とをし、一つは中とをし、一つは清とをし、一つは小米とをし、又箕二つ」であったものが、今は、「米とおしは千斛とおしに変わり、箕は颺扇(とうみ)に転じて力を費さぬ」ようになったと書いている。しかし、せんばごき・土臼・唐箕・千石とおしなどの便利な農具を持つことのできたのは、奉公人を持つことのできる比較的上農層の人たちであった。
また、越中では甲斐(山梨県)とともに、早くから馬耕が行なわれた。砺波地方では、藩政の初期から街道の宿場に伝馬(てんま)が置かれ、これらの馬が近くの農村から調達されていた。例えば、1629年(寛永6)、中野村の勘七郎が、中田へ出すように命じられた伝馬をださなかったことについての詫状が、金子家文書に残っている。1654(承応3)の太田村の場合をみると、31軒の百姓のうち22軒が馬を持っている。中には、宗右衛門のように、6頭も飼っている百姓もいた。だいたい約60石(4町=4ha)について1頭の割であった。しかし、1673年(寛文13)に開かれた山田野(現福光町)では、25石あたり1頭の馬を割り当てている。このように、農耕馬は、耕作や代かき、稲や草の運搬によく使われていたが、1693年(元禄6)、高を売ることを許されてから、高が小さくなって、馬を持つことのできない農民がふえてきた。これらの農民は、できるだけ鍬で耕すか耕作のときだけ馬を借りるようになった。1788年(天明8)の『私家農業談』でも、「第一農家に持つべきものは牛馬なり。近年当国の百姓古来より持ち来たる数を減じ」と書いている。農耕時にだけ馬を借りる借馬慣行が発生するようになってから、厩肥(うまやごえ)が不足になり、干鰯や油粕などの金で買う肥料を使うようになった。
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