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3 世代を越え ひとつ屋根の下に住まう(その1) 2013.3.26
古いものは活かしつつ、変えるものは潔く変えて、住み継ぐ家

世代を越え ひとつ屋根の下に住まう

<家屋は糸車のように、家族をひとつに紡ぐ>
迫力のある豪華なアズマダチ。心地よい緊張感が漂う玄関ホールでは、屋根裏まで見える吹き抜けに圧倒される。
小林さんのお宅には、現在、3世代が同居。1階には孝司さんご夫妻、2 階には長男の秀史さんご夫妻と5歳の娘さんの3人が暮らしている。1 階の重厚な雰囲気から一転、2 階に上がると、今どきの新築住宅のような雰囲気だ。
長年の愛着はあるものの、昔ながらの水回り・間取りに不便を感じていた孝司さんは、改築か移住かで悩んでいたそうだ。「年老いてからの雪かきや掃除の大変さを思うと、マンションに引っ越した方が良いのでは」と。
同じ頃、都会暮らしをしていた秀史さんが「ふるさとに根ざしたい」とUターンを決意する。「家を残したい気持ちが7 割、あと3 割は自分たちの生活を重視したいという想いだった」という秀史さん。当時、婚約者だった朋子さんが、両親との同居に積極的に賛成したことが、実家に戻る決定打となった。それから一年をかけ、基礎部分の補強や二世帯住宅への改築などの大規模リフォームの末、現在のお宅が完成した。
朋子さんは、引っ越して間もなく、2 階のキッチンで予約制のパン教室「smile time」を始めた。知人友人のいない土地で、地道に活動を広げて7年。今や県内各所、隣県からも習いにくるという自宅パン教室の草分け的存在だ。「すべての人に平等に与えられた時間を、ずっと笑顔で過ごせたらなんて素敵だろうって」教室の名前の由来を教えてくださった朋子さん。タイミングや想いがあまりにも合いすぎていて驚く。
バラバラに暮らすかもしれなかった家族の絆をひとつにしているのは、ご先祖たちの愛着の宿った家屋そのものの意思ではないだろうかと思えるほどだ。それは目には見えないが、糸を紡ぐ糸車のように淡々と力強く回転し、まるで100年も前からそうするのが当たり前のように、しっくりとしている。

小林邸

築約100年。息子さん夫婦のUターンを機に外装を直し、内部を大幅リフォーム。
リフォームの記録を見ながら語る、父・孝司さんと息子・秀史さん
2 階のキッチン

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