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砺波市の保存樹【単木】(その1) 2014.12.4
昔の生活を物語る樹木

 住居の森は多様な樹種によって構成されている。これらの樹は人々の暮しの中で、それぞれの役割を果し親しまれてきた樹々であり、郷土の風土になじんで生き続けた樹々である。今回市の条例に基づき、保存樹として選ばれた樹は51種130本に及んだこれらの中で、スギ、ケヤキは最も件数の多い樹種であるが、杉、欅は昔から家を建て替える時の用材として大切に育ててきた。昭和19年頃太平洋戦争もたけなわとなった折、郡に供木として伐られ、辛うじて神社やお寺の供木は免れ、柳瀬、太田地区の一部、山地は終戦によって生きのびた。

 昭和30年後半、日本の経済成長と共に生活も豊かになり、家屋の改築が盛んに行なわれたが屋敷の木を使用するより秋田杉等建築材の購入が得策とのこともあち杉や欅は残った。

 イチョウは昔の習俗もあり神社や寺院の庭に残った。だが、カキノキやクリ、イチジク等実のなる樹木は、食生活の変遷と共に不要のものとなり、納屋、車庫、庭園造りなどのために安易に伐られていった。また、イイギリ、エノキ等も落葉が庭を汚すとか、雨樋を塞ぐとか日照を妨げる等の理由で伐られ、今はこれらの大木は数少なくなり、砺波地方の昔の生活を物語る樹木は年を追って姿を消していった。

 こうした歴史的移り変わりの中にも、椿や桜、泰山木(たいさんぼく)、梅、猿滑りなど花を楽しむ木に老木の多いことや、松の類に昔の庭園が偲ばれる古木も多い。また、チャンチン、タブノキ、ブナ、ナツメ、タラヨウ、スダジイ等、当時は珍木として話題に花を咲かせたことであろう老木もある。最近は少し下火になったようにも思うが、銘木としての老木古木が姿を消していく事は惜しまれてならない。こうしたことを反省しながら保存樹はもちろんのこと、花と緑の豊かな郷土を次の世代に贈りたいものである。

イチョウ(イチョウ科)

 黄色く彩るイチョウ並木や庭の落葉は、秋の風情として親しまれてきた。また、実は「銀杏」として食べる。昔はこの銀杏を10個程藁のニゴに珠数状に指し日の中に入れて焼いた。中国の原産で日本では室町時代から植栽されたと伝えられ、長命の樹で火熱に耐え、神社や寺院に古木が多く市内でも出町の真光寺のイチョウは優れたものである。

・指定番号 1
幹周 4.42m
所有者 真光寺
所在地 出町

・指定番号 52
幹周 3.51m
所有者 観音堂
所在地 秋元

・指定番号 53
幹周 3.11m
所有者 桃井 千秋
所在地 秋元

・指定番号 116
幹周 6.67m
所有者 万遊寺
所在地 柳瀬

アカマツ(マツ科)

 砺波地方の山地にみられる松はほとんどこのアカマツである。日本では山麓から標高2000m内外にまで生え、乾燥したやせ地にもよく適応し、風通しのよい山の頂を好む。葉は軟らかく、樹肌の赤いところからメマツ(女松)ともいわれ、庭園樹としてもよく使われる。クロマツとアカマツの自然交配種もあり、アイグロマツはその両方の中間形の形質を示す。

・指定番号 94
幹周 2.71m
所有者 原野 豊郷
所在地 井栗谷



【砺波市保存樹等指定委員会『散居のみどり−砺波市の保存樹− 』平成9年より抜粋】

ゴヨウマツ(マツ科)

 古来、マツといえば、アカマツ、クロマツで、葉が2葉であることから夫婦の和合になぞらえた。ゴヨウマツは、葉の数が5葉であり日本産で最も葉数が多いマツである。ヒメコマツと呼んでいるのは、山地制のゴヨウマツのことである。その他、仲間にはハイマツ等があり、南から北まで、低地から高山まで分布が広い。用途は庭木、盆栽、花材、建築、土木、器具、楽器、彫刻材等である。

・指定番号 121
幹周 1.31m
所有者 林 一男
所在地 鷹栖出

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