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砺波市の保存樹【社寺林】(その1) 2014.12.18
砺波市の保存樹【単木】(その13)

 神社や寺院には大木・古木・名木が多い。殊に、その土地の守護神を祀った神社を囲む社叢は、「鎮守の森」として人々が大切に守り育ててきた樹林である。第二次世界大戦終了間際、散村の農家の屋敷林や寺院の境内の大木は供出材として殆どが伐採されたが、神社の社叢だけは伐採されることはなかった。聖なる森林の信仰に基づいて伐採は原則として禁じられてきたのである。二次林に植林された樹木が加わった樹林であるが鬱蒼と茂り、自然植生に近い姿を残している社叢もみられる。

 スギを主体とする社叢が多いが、比較的多くの樹種で構成され、高木層としてスギ・アスナロ・ヒノキ・サワラ・モミ・アカマツ・クロマツなどの針葉樹、ウラジロガシ・ッシラカシ・ツクバネガシ・スダジイ・シロダモなどの常緑広葉樹、ケヤキ・エノキ・ナラ・ブナ・ホウノキ・ハクウンボク・イチョウ・ウワミズザクラなどの落葉広葉樹がある。亜高木層としてソヨゴ・ヤブツバキ・サカキ・モチなどの常緑広葉樹、エゴノキ・イロハカエデ・コシアブラ・ヤマボウシ・ハゼなどの落葉広葉樹がある。低木層としては。ヒサカキ・ヒメアオキ・ハイイヌツゲ・サンショウなどがみられる。また、林床にはヤブコウジ・オウレン・チゴユリなどのみられる社叢もあり、発芽したばかりのスギ・アカマツ・エノキ・イイギリ・カシ類など幼木がみられるなど自然植生の継承存続に大きな役割をはたしている。

 スギ・ケヤキなどの大木は、御神木として「注連縄(しめなわ)」が張られていることが多い。それらは、神社を中心に形成された地域共同体のシンボルとしてきた樹々である。

 近年、農家の屋敷林と同様、神社や寺院の樹木にも衰退がみられる。その中で、選ばれた樹林はいずれも、地域の緑の環境として、あるいは歴史的環境として大切な森である。 

太郎丸八幡宮の社叢

 北陸自動車道砺波インターチェンジ入口の南にある太郎丸神社の社叢は、スギの老木を主体とした見事な森である。幹周り4.50mの大杉をはじめ、幹周り3m以上の大スギは10本、ほかに、スギ、アスナラ、ツガ、ケヤキ、クリ、ウラジロガシ、エノキ、アカマツ、サクラ、イチョウ、カキノキ、ヒサカキなどがみられる。高木、亜高木、低木の多くの木々につつまれたこの森は、かつて、砺波平野の散村に多く見られた“鎮守の森”の面影を残す貴重な樹林である。

・指定番号 1
樹種 スギ
面積 2,524u
所在地太郎丸

大門祖父川神社の社叢

 祖父川神社は、旧千保川左岸からの分流であった祖父川守護神として堤防上に南向きに祀られた神社である。境内は南北に細長い舟型をしている。社を囲むスギはいずれも老木で幹周3m以上のスギが6本、そのうち最大のスギは4.82mである。社の北西側にはミズギ、シロダモ、ヤブツバキ、ケヤキが生え、社の南側にはマツ、イチョウ、サルスベリ、カエデ、サンゴジュ、モチノキ、サザンカ、ユズリハなどが見られる。

 近年、スギの樹勢の衰えが目立ち、このうち平成8年にはスギ8本が伐採された。

 ・指定番号 2
樹種 スギ
面積 3,175u
所在地 大門

五郎丸神社の社叢

 国道156号線を砺波から井波に向い、五郎丸地内に入って間もなく、西側へ約200mの所に神明社の社叢がある。散村地帯の「鎮守の森」の姿をとどめ、スギの大木が目立ち、モミ・ウラジロガシ・ネズミモチ・タラヨウ・タイサンボク・クスなどのみられる社叢である。社地は、南北に紡錘型をなし、伝承では「五郎丸」という船が沈んだ跡という。社殿の上手にスギなどの防水林を配した舟型屋敷の一種であろう。なお、この社叢はかつて、加賀藩の御留林に指定されていた森である。

・指定番号 3
樹種 スギ
面積 4,773u
所在地 五郎丸

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