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「『砺波野が育んだ地酒』」の記事

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D−2杜氏集団について

2014.6.24

(6)富山県へ来ている杜氏たち

(平成6年酒造年度・富山税務署資料)



越後杜氏(新潟県)

玉旭酒造  婦負郡八尾町  1名
吉之友酒造 婦負郡婦中町  1名
富美菊酒造 富山市百塚   1名
本江酒造  魚津市本江新町 1名
銀盤酒造  黒部市萩生   1名
皇国晴酒造 黒部市生地   1名
林酒造   下新川郡朝日町 1名
立山酒造  砺波市中野   1名
若鶴酒造  砺波市三郎丸  1名
(計9蔵 11名)



能登杜氏(石川県)

鷹泉酒造 上新川郡大山町・有沢酒造 中新川郡上市町 1名
玉旭酒造 婦負郡八尾町・藤波酒造 氷見市伊勢大町  1名
清都酒造 高岡市京町・千代鶴酒造 滑川市下梅沢   1名
桝田酒造 富山市東岩瀬 1名
高沢酒造 氷見市北大町 1名
三笑楽酒造 東砺波郡平村上梨 1名
成政酒造 西砺波郡福光町館  1名
(計10蔵 7名)



南部杜氏(岩手県)

若駒酒造 東砺波郡井波町 1名
若鶴酒造 砺波市三郎丸  1名
(計2蔵 2名)




(7)杜氏さんの話

山岸誠一さん 84歳 立山酒造

 現在の酒造りは、遠方より杜氏及び蔵人を頼み、その人たちの技術で酒を造っている。地元の杜氏を育てようとはしない。これからは、蔵ごとに杜氏を育てていかねばならない。かつてのように冬期間雇用というのでは、若い人たちが入ってこない。年間雇用として、冬仕込み以外の時は造った人が販売活動をすれば、自分たちの造った酒の特徴がわかるだけに、より販売効果があがると思うし、飲む人の好みもわかるので、杜氏の腕もあがると思う。



三盃幸一さん 67歳 桝田酒造

 杜氏はみな自分の酒の青写真を持っている。造りながら目で確かめ、匂いをかぎ、手で触れ、舌で味わう。五感を駆使して状況を判断し、自分の酒を造り上げる。洗練された舌の感覚などの、「才能」の個人差はあるだろうが、それよりも豊富な経験が大切だと思う。酒造りは伝承技術でさまざまな要素おを経験と勘で習得していくものだ。

 いったん蔵入りしたら私情は許されない。この世界では親の死に目にも会えないことを覚悟しなければならない。杜氏は一人では酒は造れない。蔵人たちの和を保ってこそ良い酒が出来る。忍耐だ。何年杜氏をしようと、一回一回が勝負だ。相手は生きものだから。


 
新谷寅吉さん 62歳 三笑楽酒造

 酒造りは、「一麹、二酛、三造り」といわれるようにまず麹が基本になる。この出来いかんにより、味や香りなどの酒の性格がおおむね決定する。仕込みは同じでも、タンク一つ一つ味が違う。酒は、米・水・麹などの調合具合、日数、温度などで風味が決まる。酒は生きものであるから病気にかかりやすい。いつも真剣勝負だ。近代的機械を駆使しても、人間の勘にはかなわない。



 


この調査にあたり

この調査にあたり、蔵の忙しい時期に何度もお尋ねしたにもかかわらず、時間をさいていただいた蔵の御主人・杜氏さん方、資料を送っていただいた新潟県酒造従業員組合連合会、能登杜氏組合、南部杜氏組合のみなさんに心から感謝いたします。
(般林雅子)


 本展の開催にあたり下記の方々にお世話になりました。記して感謝を表します。

砺波税務署、富山県酒造組合連合会、砺波酒造組合、富山県立図書館、福光町立図書館、井波町立図書館、富山地方気象台、立山酒造(株)、若鶴酒造(株)、吉江酒造(株)、(名)若駒酒造場、(有)戸出酒造、黒部酒造(株)、成政酒造(株)、三笑楽酒造(株)、銀盤酒造(株)、桝田酒造店、酒井宏、酒井健次、砂土居行雄、五反正弘、長久紀一、宮新隆、穴倉理一、春田嘉一郎、松浦芳太郎、出村忍(敬称略)



【砺波郷土資料館『砺波野が育んだ地酒』1995年より抜粋】