砺波市の文化を、デジタルで楽しむウェブサイト。TONAMI DIGITAL ARCHIVES

はじめに 2013.3.25
なぜ今、郷土料理なのか

とやま食の匠・鹿島朝子さん

B 級グルメや新作ご当地メニューが衆目を集める今、なぜ郷土料理なのでしょうか。それは、砺波らしさの再発見と、古くて新しい食生活の提案です。
若い奥様たちは愛する家族のために、毎日料理を作っています。卵焼き、肉じゃが、サラダ、いろいろあるでしょう。でも食卓のメニューの中に「砺波らしさ」はあるでしょうか。料理本やインターネットにあふれる、全国共通のレシピが多いのではないでしょうか。
さて、「砺波の食」といえば何が思い浮かぶでしょう。大門素麺、鮎の塩焼き…ほかになかなか思いつきません。しかし、砺波といえば千年以上前から米どころとして知られる豊穣の大地。食文化が貧弱なはずはありません。
そんな思いでスタートしたのが今回のプロジェクトです。調査の結果、多種多様の郷土料理があることがわかりました。よごし、いとこ煮、里いもの田楽、干しずいきの白和え、おすわい、大根めし、ゆべし、干しなすの炒め煮など。もう驚くしかありません。砺波の食文化は、想像以上に豊かなのです。
しかも食べてみると、どれも美味しいのです。素朴で、素材本来の味が楽しめて、それでいてヘルシー。なすや大根、いもじなどは夏場に干して、冬場に食すという保存の工夫があったり、食材をムダにしない調理法があったり。これはもう「知恵の結晶」というしかありません。砺波の風土が、気が遠くなる時間の中で生み出したものです。つい昭和30年頃までは当たり前のように作られていましたが、砺波の食卓から消えつつあります。
大げさにいえば、「砺波らしさ」喪失の危機なのです。この本は郷土料理を押しつけるものではありません。少しだけ見直してみてもいいのでは、というささやかな提案です。ライフスタイルの中に取り入れることで、ちょっぴり豊かな生活が送れるかも知れません。
さあ、まずは「よごし」あたりからチャレンジしてみてはいかがでしょう。
                         (野原大輔:砺波市教育委員会学芸員)


写真:とやま食の匠・鹿島朝子さん

企 画
砺波郷土料理プロジェクトチーム(つぐまたかこ、北村夏樹、島田繁則、高畑元昭、三上亜紀代、野原大輔、北井敦美、明石あおい)


協 力
取材にご協力いただいたみなさん、となみの農産物生産グループ協議会、富山県砺波農林水産センター 担い手支援課経営支援班、となみ散居村ミュージアム、チューリップ四季彩館、砺波郷土資料館、砺波市観光協会

「郷土料理編」の他の記事

MORE

「郷土料理」のタグの記事

MORE