正倉日記

 

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和紙って不思議!−文化財の素材としての紙−

2017.7.25

外国人が驚いた日本の和紙の用途

紙製品いろいろ

紙製品いろいろ

文化財といえば、建築物、仏像、絵画、古文書などを思い浮かべますが、それらは木・鉄・紙で出来ているモノが多いですが、その中で紙に注目してみました。

ユネスコの世界遺産無形文化遺産に登録されている「和紙 日本の手漉(てすき)和紙技術」は「石州半紙(せきしゅうばんし)」(島根県浜田市)と「本美濃紙(ほんみのし)」(岐阜県美濃市)、「細川紙(ほそかわし)」(埼玉県小川町、東秩父村)の3つの和紙。 この3か所では今も楮100%、手すきで、伝統を守って製作を行っています。

そもそも日本の紙は中国から伝わったものが起源で、中国では竹や木綿から紙を作ってたのが、朝鮮半島を経て、日本へは7世紀ごろに伝わりました。奈良時代には仏教の経典を書き写す、仏画を描く、などに使用されました。
紙の用途は世界共通で「文章を書く」が基本です。

しかし日本では書く以外の用途あります。
平安時代に用途が変化しました。紙に撚(よ)りをかけて「こより」にし、紐として結びました。紙が初めて用具へ変化しました。これは日本の和紙がねばり強く、しなやかという特徴をもっているからです。 
中世頃より、紙に柿渋を塗って、防水・防腐効果を追加しました。
そして江戸時代より日常生活用品に色々使われるようになりました。

たとえ話として面白いのは、幕末から明治にかけて日本に訪れた外国人のエピソードです。 
日本は鎖国していたので、外国人にとっては神秘の国でした。それら外国人が日本に訪れ仰天、条約締結に来られた伯爵、研究のために訪れた学者などの有識者は一様に「紙がすばらしい」と大絶賛です。
プロシア(ドイツ)人 オイレンブルク伯爵の言葉は、「紙の用途がこの国より広いところはどこにもないだろう」(幕末に来日)
アメリカの紙の研究者 ハンターの言葉は「日本人が紙をほとんど無限ともいえる用途に使っていることは驚くべきである。今日本で現につくられている手すき紙は世界における全製紙技術の奇跡といっても、決して誇張ではない」(日本には昭和の初めに来ている)
何を見てそう語ったかというと次の通りです。
ガラスの代わりに壁を紙で仕切っている → 障子戸
雨の中を紙の傘を差して歩いている → 番傘 渋柿を塗っている
紙のランプ 燃えないのか! → 提灯
その他 紙の着物 紙衣(かみこ) や 擬革紙(ぎかくし)(革っぽく見える紙)も称賛されました。

それら大絶賛の和紙ですが、明治の頃の和紙は、日本にあまり残っていません。
自分たちにとっては極普通の紙だったので、とっておくことをしませんでした。
実は、明治に外国の研究者が自国に持ち帰ったものが和紙コレクションとして海外に残っています。今となっては貴重な資料です。

ということで、砺波にある文化財に目を向けてみますとやはり古文書で、紙の文化財が7点あります。
一番古いものは
紙本妙法蓮華経巻子八巻、巻物になっているお経で、平安時代後期頃で、千年ほど前のものです。
そのほかお手紙系の文書、文化財では書状といわれるもので、宛名と差出人、日付などが書かれています
多いのは、家や村に伝わる文書で十村や肝煎といわれる農民の管理職の家につたわる○○家文書などです。
貴重なことを綴った古文書で千年以上もつものですが、しかし!天敵は虫です。
楮100%という植物で作られた紙は、虫にとっては美味しいようで、ほとんどの古文書は虫に食べられています。
虫食い防止には燻蒸(くんじょう)という虫を薬剤で殺すことをしていますが、環境に良くない薬剤もあることから、最近では、おそうじなどをマメにして、虫が寄り付かない環境にすることが勧められています。