砺波市の保存樹【屋敷林】(その1)
2014.12.25
風土としての文化遺産
屋敷林として保存対象に抽出したのは、市内全域で26箇所である。樹種の組合せ、樹層、樹令構成、屋敷林面積、地域間の分散等若干の差異はあるが、いずれも、安定した樹叢で、屋敷林と生活者との交流の歴史であり、今後への積極的な見本として選定した。
屋敷林は、生活者に深く関わってきた人為林で、これからも一段と変化していくものと思われる。最近の約40年間で、かつての屋敷林内容は大幅に変り、その独立宅を連結した用水路の雑木林が完全に消滅した。加え、生活様式や屋敷林の実利用形態の変化はスギ、ケヤキ、ハンノキ、エノキ等の大径木の成立を不要としている。しかし、昨今の環境は、個人の意識をこえ、樹木との共存形態の一つとして、屋敷林を重視し注目するに至っている。個人が屋敷林管理うあ。風雪等のリスクだけで、その存否を考えることでは、砺波の散居村と屋敷林の存在は、まさに自然公園の主座であり、人と自然との関係を風土として表現した文化遺産といえる。先人の知恵を伝承し、生活者の新しい期待も取り入れ、この緑の原点を充実させることが、時代に対応した日本の先進にふさわしい役割といえよう。
現在の屋敷林は、安定し内容が豊富とはいえず、時代と樹々の期待に応えきれてはいない。生活者の悩みにも多面的にこたえ、一層新しい見本となる屋敷林の造成、保全が望まれている。とりわけ屋敷林の中心となっているスギに枯死現象がみられ、保存樹林のなかにも発生していることに留意する必要がある。
嶋田巳之助宅の屋敷林
指定番号 1
南面は広くスギ中心の屋敷林であるが、中央部にタブノキが入り、屋敷林全体を盛り上げている。北面にメタセコイヤがあり、屋敷林の南面と北面のバランスがとれている。西面の目かくしも自然形で、中小木が全体に配置され高木を支えている。全体として横に広がりを感ずる躍動感のある屋敷林である。
・指定番号 1
樹種 スギ、タブノキ、メタセコイヤ
面積 1,679u
所在地 太郎丸
矢農ゆり子宅の屋敷林
指定番号 2
スギ、エノキ、ケヤキの大木にカエデが混生した相観。北西にケヤキ、タケ等が入る。東面から南面の庭にはカシ、ヤブツバキに加えヒサカキ、ツツジの低木が多数成立し、ロウバイ、マユミの珍しい木も入る。林内全体の低木が自然体で活気にみなぎる。最近、スギの樹勢に衰えがみられ、枯死寸前のものもある。
・指定番号 2
樹種 スギ、エノキ、ケヤキ、カエデ
面積2,054u
所在地 神島
蔦繁宅の屋敷林
指定番号 3
スギが主林で家屋を包む。南面から西面にスギ生垣が目かくしの役をはたす。前庭は広く庭園樹が沢山入る。南面の充分な盛土の庭は上層にスギ、その隙間を厚く埋めるようにシラカシ、モミが広がる。また低木もバランスよく配されている。門前向かって左側のマツは樹勢も良く素直な成長をしている。北西面にはタケ(モウソウチク)がある。
・指定番号 3
樹種 スギ、シラカシ、モミ
面積 2,079u
所在地 宮村
【砺波市保存樹等指定委員会『散居のみどり−砺波市の保存樹− 』平成9年より抜粋】