正倉日記

 

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ねぇ、「べんけい」って知ってる?

2018.1.23

砺波の人たちが知らない砺波発祥の郷土料理

砺波発祥?!の郷土料理、その名も「べんけい」!

砺波発祥?!の郷土料理、その名も「べんけい」!

先日、県内の方から郷土資料館に「べんけい」という料理についてお問い合わせがありました。砺波地方発祥の郷土料理??とのことですが、初めて聞く名前、「べんけい」。生まれも育ちも砺波という館長も職員も「べんけい」なんて知らない、聞いたことがないとのことでした。実を言うと、知らなくて当然なんです。

当館にある資料を調べてみたところ、福島県の南相馬地方の郷土料理に「べんけい」というものがあることがわかりました。

そこでちょっとピピッとつながりました。実は今から200年ほど前の江戸時代後期、文化文政のころにかけて、砺波地方を含む加賀藩から南相馬に多くの民が移住しました。きっかけは天明3年の浅間山の噴火です。噴火により灰が降り、関東一円が不作になり、その後も凶作・冷害・疫病が流行して天明の大飢饉がおこりました。人口は激減、田畑は荒廃していきました。 年貢が入らない相馬の中村藩は対策として荒地を開拓し、耕作する農民を他の地域から受け入れることにしました。 北陸では土地の割に人口が多く、さらに勤労で真面目という評判があったため、加賀藩の農民に白羽の矢があたり、農民を輸入したかったのですが、加賀藩から断られてしまいました。 困った相馬中村藩は相馬の浄土真宗の寺に、北陸に行って移住の勧誘をするように頼みました。北陸は真宗王国。信心深いので、浄土真宗という確かな人の勧誘があって、土地をあげるという話に、多くの加賀藩の砺波地方の人が相馬に移住しました。 しかし当時は藩を越えて移住したり、用もなく旅をすることも禁止されてましたが、唯一、規制がゆるやかだったのが、伊勢参りなどの参詣(さんけい)の旅でした。そこで、移住者はお伊勢参りに行ってきます!みたいな荷物で出掛け、そのまま相馬に向かったと伝わっています。相馬側ではとってもwelcomeなので、家も米も味噌も布団も用意して迎えたと言われています。

話はべんけいに戻りまして、移住先の相馬で故郷砺波の味を懐かしんで伝えていったものが「べんけい」と判明しました。といっても今も昔も砺波に「べんけい」という料理はありません。「べんけい」という方言は、民俗学者の佐伯先生の本では大根おろしやトウガラシ入りの大根おろしを「ベンケオロシ」と砺波の一部で使っていたとのことですが、今では死語のようで使われていないようです。力が強くて有名な武蔵坊弁慶でさえ、辛くて降参するということで、大根おろしにベンケイの名がついているようです。  

作ってみませんか? べんけい
味が染みてておいしそう!南相馬から送っていただいた元祖べんけい!

味が染みてておいしそう!南相馬から送っていただいた元祖べんけい!

ということで、このベンケイ、レシピと作り方を紹介します。
材料は大根
1本、ずいき適当、鷹の爪少々、あとは調味料。酢、醤油、砂糖と炒めるための油、以上です。大根を厚さ2mmほどのいちょう切りにし、油で炒め、柔らかくなりすぎるのを防ぐために酢を少々入れて更に炒め、ずいきも入れます。全体に火が通ってきたら、酢、砂糖、醤油を入れ、鷹の爪を入れて、炒め煮にします。味が染み込んだら火を止めて冷えて味がなじんだ頃に食べます。 ということで、私が作ったものをお持ちしました〜 素朴な味でクセになるです。日持ちもするとのことで、大量に作って冷蔵庫に常備しておくのが南相馬流とのことです。 見た目にはイリゴクに似ているようにも思いますが、イリゴクはかぶで作るもので、酸っぱくなく、ずいきも入りません。どうやら砺波の郷土料理のスズキとイリゴクを合わせたものを、カブよりも手に入りやすい大根で作ったのがベンケイのようで、相馬でアレンジしたものが、故郷砺波の郷土料理、伝承料理として今に伝えられた ということです。

我々に何かできることは―
南相馬の一本松 残念ながら今は撤去されてしまいました

南相馬の一本松 残念ながら今は撤去されてしまいました

南相馬市の中でも、砺波地方からの移住者が多く移り住んだ萱浜(かいはま)地区で伝えられているとのことですが、2011年の東日本大震災での津波の被害が大きく、大部分が災害危険区域に指定され、居住が制限されたため、地域のコミュニティーが崩壊し、この「べんけい」の継承の危機にあるとのことです。200年もの間 伝えられてきたことが、震災の影響によって消えかかっているのがとても残念ですが、今、200年の時を越えて砺波にこのベンケイが戻ってきたのも、また何かの縁、ご先祖様のお導き、という感じがいたします。
南相馬での継承が危ぶまれているならば、砺波で流行らせて継承していっても、逆輸入みたいで良い気がします。何せ作り方は簡単で、美味しい!
材料も作り方も簡単なので、もし詳しいレシピなどを知りたい方は資料館0763(32)2339まで、ご連絡下さい。